日曜の夜、特に10時を過ぎたあたりからやはり胸が苦しくなる。
無為に平日を消化し、その上土日までも無為に終わってしまった虚無感。部屋の中で目的もなく情報の波に漂う昼間とは違い、謎の焦燥感に駆られ、とりあえず部屋を出るのもいつもの日曜だ。
少し肌寒いこの季節に適当なジャージを下に履き、適当なシャツを隠すようにアウターのチャックを上まで閉める。靴下は履くのが面倒なので季節外れのサンダルというなんともバランスの悪い格好で外に出る。
目的もない現実逃避の散歩が始まるわけだ。
手荷物は持ちたくないのでスマホと煙草だけ持ち、イヤホンをして外に出る。案の定外は寒い。それでも手放しで感じられる最後の休日の時間を限界まで堪能したいのだ。
家の近く(といっても10分くらい歩くが)のタバコ屋の前で一服しながら、ぐるぐると意味の無いことを考える。忙しさに追われるとこんな時間もないのだろうと思うと随分と贅沢な時間だと思う。
会社に入ってからはメンソールを好んで吸っていたが、今日は久しぶりにピースを吸っている。研究室の頃はこればかり吸っていたのでなんとなく当時を思い出す。
ピースの甘味を感じられる味わいは変わらず美味しく感じ、それはなんとなく自分が何も変わっていないことを思わせた。
変わらないことに危機感を感じつつも、何もしない、というか現実から逃げる僕は本当にどうしようもないと思う。本当に変わらない。
逃げて、逃げて、どうしようもないところまで逃げる。
昔テニスの団体戦の試合にダブルスで出ていた時に顧問に逃げるな!的なことを言われたことを思い出す。その時は泣きながらコートに立っていたが、勝敗は覚えていない。
昔から色んなことから逃げたくてしょうがなかったような気がする。
結局今の会社に入ったのも自分の努力不足だし、もっと言えば大学受験も最後の方は逃げていた気がする。1次試験で第1志望に落ち、後期試験で不合格が怖くて受験をせず、適当な私立大学に身を落ち着けてしまった。そういう逃げの記憶ばかりが、今日この時間に頭の中に沢山と浮かぶ。
僕は人間の弱い部分をまとめて煮込んだみたいな人間性をしているように思う。
サンダルを履いている僕の剥き出しのつま先はしっかりと冷え、とうの昔にピースも吸い終えた。
これまた現実逃避のこんな記事を書いている間にも、今日という自由は残り30分になった。
このマスターベーション記事を締めくくったあとは来た道を戻って布団に入って寝る。起きたら無意味な出社が待っているのみだ。
長居し過ぎたタバコ屋に背を向け家に帰る。
明日からはまたメンソールを吸おうと僕は思った。